「建設業の人手不足を補いたいが、外国人技能実習生の受け入れってどうやればいいのか分からない」
「制度は聞いたことがあるけど、何から始めればいいのかイメージが湧かない」
「手続きが煩雑そうで不安」
そんなお悩みをお持ちの建設業のご担当者さまへ。
本記事では建設分野における外国人技能実習制度について、基本から実務的な手順やメリット・デメリットまで徹底的に解説します。
この記事を読むことで、以下の3つの情報を得ることができます。
1.建設業における技能実習制度の仕組みと特徴
2.実際に技能実習生を受け入れるための具体的な条件・要件
3.受入によるメリット・デメリットとその対応策
制度の全体像から、実際に現場で運用するうえで知っておきたいポイントまで丁寧に解説しています。
「制度を理解して、今後の人材戦略に活かしたい」と考えている方にぴったりの内容です。
制度のハードルを正しく理解すれば、建設業の安定した人材確保やグローバルな展開にもつながる第一歩となります。
ぜひ最後までお読みいただき、実習生受け入れの準備にお役立てください。
建設業における技能実習制度とは
技能実習制度の概要と目的
技能実習制度は、日本の技術や知識を発展途上国の人材へ実地で移転する国際貢献を目的としています。
1993年の創設以来、多くの国から実習生が来日し、建設業など様々な分野で受け入れが進んでいます。
厚生労働省や法務省など複数の公的機関が関与し、一定条件を満たす企業のみが実習生を受け入れられる仕組みです。
建設分野における技能実習制度の特徴
建設分野では、建設業法第3条に基づく許可を持つ企業が対象となります。
また、JAC(建設技能人材機構)の関与が必須で、建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録も義務付けられています。
このような業界特性に合わせた管理体制により、安全確保と効果的な技能習得が図られているのです。
技能実習制度の在留資格と期間
実習生は「技能実習」という在留資格で滞在します。
1年目は技能実習1号で技能検定合格後は2号へ移行し、優良企業では3号実習も可能となり、最大5年間の実習ができます。
段階的なステップアップを前提とした設計になっているのが特徴です。
技能実習のフロー(入国から特定技能への移行まで)
母国での基礎教育後、日本の受け入れ先とマッチングを行い来日します。
実習終了後は「特定技能1号」として引き続き日本で働く道も開かれています。
このように中長期的な人材育成や戦力化に対応した構造となっているのが魅力といえるでしょう。
建設業界での受け入れ可能職種・作業内容
2024年時点で22職種33作業が対象となり、型枠施工や鉄筋施工など専門技能を要する職種が中心です。
職種ごとに技能検定があり、習得度を客観的に証明できる仕組みが整っています。
実習での業務割合とルール
実習は「技能習得」が目的のため、与える業務は技能移転に直結するものが求められます。
労働条件は労働基準法が適用され、実習進捗の記録や報告義務もあります。
こうした枠組みの中で、実習生は将来的な母国での活用を見据えた研修を積み重ねていくのです。
技能実習生を受け入れるための条件と要件
建設業法第3条の許可取得
建設業で技能実習生を受け入れるには、「建設業法第3条に基づく許可」が必須条件です。
これは国土交通省または都道府県知事が発行する建設業の営業許可であり、500万円以上の工事を請け負う場合に必要となります。
この許可がなければ技能実習制度の利用も認められないため、受け入れ検討の際は自社の許可取得状況を確認することが前提となるでしょう。
建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録
建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録も必要です。
このシステムは技能者一人ひとりの就業履歴や資格・能力を一元管理する国の制度です。
建設分野での技能実習生受け入れには原則として登録が求められており、実習生の技術習得状況を客観的に把握する役割を担っています。
技能実習生の賃金(月給制・同等以上)
実習生への賃金は日本人労働者と「同等以上」が原則です。
月給制での支給が基本とされ、地域の最低賃金を下回ることは認められません。
また残業手当や休日手当なども法定通り支払う必要があります。
実習生は「安い労働力」ではなく、適切な労務管理のもとで処遇すべきなのです。
技能実習生の受け入れ人数制限
受け入れ人数は日本人常勤職員数に応じて制限されています。
常勤職員が301人以上なら実習生は最大5%まで、301人未満の場合は1年目は職員数の10%、2年目以降は20%までとなっています。
これは適切な教育・管理を確保するための制限であり、上限を超えると制度違反となるので注意が必要です。
監理団体への加
受け入れ企業は監理団体と契約し、その指導・支援を受ける必要があります。
監理団体は実習計画作成支援や定期巡回・トラブル対応などを行う専門機関です。
団体の質には差があるため、信頼できる団体を選ぶことが重要といえるでしょう。
実習責任者・指導員・生活指導員の配置
受け入れ企業には実習責任者・技能実習指導員・生活指導員の3名の配置が義務付けられています。
実習責任者は制度運用の統括、指導員は実務指導、生活指導員は日本での生活サポートを担当します。
この役割配置が実習の質と効果を高めるために重要です。
住居・社会保険・帳簿などの生活・法的整備
住居や生活環境の整備も必須で、居住スペースの広さなどが細かく定められています。
社会保険加入や労働条件通知書など帳簿類の整備も求められ、不備があれば受け入れ許可が取り消される可能性もあります。
欠格事由の確認
過去に重大な労働法違反があった企業や暴力団関係者など、欠格事由に該当しないことも確認が必要です。
制度の信頼性を守るため、該当する企業は対象から除外されます。
受け入れ検討前に自社の実績や体制を見直すことが大切です。
建設業で技能実習生を受け入れるメリットとデメリット
メリット1:人手不足の解消
建設業界では少子高齢化による人材不足が深刻です。
技能実習制度を活用することで、一定期間安定した労働力確保が可能です。
建設分野では全産業の実習生約14%が活躍しており、人手不足解消の重要な手段となっています。
メリット2:計画的・安定的な人材確保
最長5年間の在留が認められるため、日本人若年層より長期的・計画的な人材育成ができます。
段階的な育成プランにより、実習生を着実に戦力化できる点が強みです。
メリット3:特定技能への移行が可能
実習修了後は「特定技能1号」へ移行可能で、育てた人材を継続して雇用できます。
日本の生活や職場に慣れた人材は即戦力として高い価値を持ちます。
メリット4:海外展開の足掛かり
帰国した元実習生が自社技術の「アンバサダー」となり、現地との信頼関係構築に貢献します。
これは単なる人材確保を超え、企業のグローバル化を後押しする戦略ともなり得るのです。
デメリット1:日本語や文化の壁
最大の課題はコミュニケーションの障壁です。
建設現場では安全確認が重要であり、言葉の誤解は事故に繋がります。
専門用語の理解には時間がかかるため、日本語教育の強化が必要です。
デメリット2:実務未経験者の多さ
多くの実習生は実務経験がないまま来日します。
業務に慣れるまで時間がかかり、指導する社員の負担も増えますが、2〜3年目には成長するため長期的視点での評価が大切です。
デメリット3:採用~受け入れまでの時間
受け入れには多くの手続きが必要で、採用決定から現場配属まで半年以上かかることも珍しくありません。
このタイムラグを考慮し、中長期的な戦略として人員計画を立てる必要があります。
まとめ
本記事では、建設業での技能実習生受け入れに関する制度概要から必要条件、メリット・デメリットまでを解説しました。
受け入れにあたっては制度の理解と事前準備が不可欠です。
以下のポイントを押さえて、適切な運用に繋げていきましょう。
1.技能実習制度の目的を理解
2.許可・登録など要件を確認
3.賃金・人数制限に注意
4.長期的な人材確保が可能
5.言語・文化の壁に備える
6.計画的な採用スケジュール
受け入れ成功の鍵は、丁寧な準備と実習生との信頼関係にあります。