「技能実習生を受け入れたいけど、具体的に何から始めればいいのか分からない」
「制度の仕組みや、企業としての要件についても整理して把握したい」
そんなお悩みを持つ企業担当者の方へ、本記事では技能実習生の受け入れに必要なすべての基本情報を、分かりやすく丁寧に解説します。
特に、初めて技能実習生の受け入れを検討している企業や担当者にとっては、制度の複雑さや必要な準備事項に戸惑うことも多いものです。
しかし、正しい流れと手続きを理解しておけば、実習生との信頼関係も築きやすく、スムーズな受け入れが可能になります。
■本記事でわかる3つのポイント
- 技能実習生の受け入れに必要な具体的手順と流れ
- 制度全体の仕組みと関係機関の役割
- 受け入れ企業として必要な条件と準備項目
この記事では、制度の対象職種から受け入れ方式、企業が満たすべき条件までを体系的に解説しています。
法律や手続きの変更に対応した最新情報を基に構成しているため、実務レベルで役立つ内容ばかりです。
記事を読み終える頃には、「今、自社が何をすべきか」「どのステップから着手すれば良いか」が明確になります。
技能実習制度を活用し、優秀な外国人材を安心して迎え入れるための第一歩をこの記事で踏み出しましょう。
技能実習制度の対象職種と受け入れ条件
技能実習の対象職種(87職種159作業)
技能実習制度では、実習生が従事できる職種が厳格に定められており、2024年時点で87職種159作業が対象となっています。
厚生労働省と出入国在留管理庁が公式に公開するこれらの職種は、技能を段階的に習得しやすく、適正な評価が可能なものが基準です。
金属加工・機械整備・建設作業・農業・食品加工など、現場での技能を必要とする分野が大半を占めているのが特徴的です。
この分類は「技能の伝承」という制度本来の目的を果たすために設けられています。
例えば食品製造業では「漬物製造」や「パン製造」は対象ですが、レジ打ちや清掃業務などは含まれません。
日本人と共に業務を経験し、技能試験によって段階的にステップアップする仕組みであり、企業側もこの構造を理解して該当業務を明確にしておく必要があるでしょう。
対象となる職種や業種の傾向(例:建設、食品製造など)
対象職種の傾向を見ると、日本国内で人手不足が深刻な業種が多く含まれています。
特に建設業・農業・食品製造業・機械加工業などの分野で受け入れが進行中です。
これは労働力の高齢化や人口減少により、現場を支える人材が年々減少している背景があるためです。
建設分野では鉄筋施工や型枠施工といった基礎工事が対象となり、都市部での再開発やインフラ整備の需要に対応しています。
農業ではビニールハウス栽培や養豚・養鶏といった分野で活躍するケースが増加傾向にあります。
これらの業種は作業が手作業であることや、現場経験が技能習得につながるため、技能実習制度の目的と合致しているのが特徴です。
介護分野のように近年追加された職種もあり、制度は社会ニーズに応じて更新されていくものといえるでしょう。
技能実習生の要件(年齢・学歴・経験など)
技能実習生になるための基準はいくつか存在します。
年齢は原則18歳以上であること、学歴は受け入れ国によって差異があるものの、多くの場合は中等教育(日本の中学校卒業相当)修了が目安となっています。
健康状態が良好で、一定の日本語理解力を有することも必須条件です。
実習に関連する基礎知識や技能を母国で身につけていることも要求されるポイントです。
多くの国では渡航前に一定期間の日本語教育と技能訓練、生活指導を受けることが義務付けられており、例えばベトナムやフィリピンの送出機関では1〜2ヶ月の渡航前研修を実施しています。
日本語能力はN5からN4程度の日常会話レベルが期待され、職場でのコミュニケーション円滑化のため重視されることが多いようです。
企業側も要件を満たした実習生を適切に選抜できるよう、信頼できる送出機関との連携が不可欠となるでしょう。
技能実習の受け入れ方式と関係機関の役割
受け入れ方式:企業単独型と団体監理型
技能実習生の受け入れには「企業単独型」と「団体監理型」の2種類があります。
企業単独型は大企業向けでハードルが高く、団体監理型は中小企業でも導入しやすい方式です。
現在は全体の約96%が団体監理型となっています。
監理団体とは?役割と選び方
監理団体は企業をサポートする中間組織として、実習計画作成支援・書類手続き・生活支援・法令順守チェックなどを担当しています。
「一般監理事業」と「優良監理事業」の2区分があり、優良認定団体はより信頼性が高いとされています。
選定時は認可状況・サポート体制・訪問監査頻度・実績などをチェックすると良いでしょう。
送出機関とは?機能と注意点
送出機関は実習生の母国側で選抜・教育を行い、日本文化や基礎技術を教育します。
ただし手数料高額や教育不足の機関もあるため注意が必要です。
各機関が担う具体的な役割
制度全体では受け入れ企業が実習生雇用と技能指導、監理団体が適正運用監督、送出機関が人材選抜と事前教育を担当しています。
また、外国人技能実習機構(OTIT)が制度全体の監督機関として機能し、JITCOが情報提供や支援機関としてそれぞれ役割を担っています。
これらの連携が制度成功に欠かせません。
技能実習生の受け入れに必要な企業条件
技能実習責任者・指導員・生活指導員の配置
技能実習生を受け入れる企業では、技能実習責任者・技能実習指導員・生活指導員という三つの役割を担当者として配置することが必要です。
技能実習責任者は実習全体の管理を行い、技能実習指導員は現場で作業内容や技能を直接指導し、生活指導員は日常生活の相談や支援を担当します。
これらの担当者は一定の講習受講が義務付けられており、指導員一人あたりが担当できる実習生数にも上限が設けられています。
技能実習日誌の作成
実習生が日々の作業や学びを記録する「技能実習日誌」の作成が義務付けられており、どのような作業をいつ・どれだけ行ったかを記録します。
この日誌は監査の対象となり、不備があれば制度違反として指導が入る可能性があります。
単なる記録ではなく、指導の質向上や実習生の振り返りにも役立つ重要な管理資料です。
社会保険・労働保険への加入
実習生を雇用する企業は健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険への加入が義務付けられています。
これにより実習生が病気やけが、失業などの際に公的保障を受けられるようになります。
保険未加入が発覚した場合、制度違反として受け入れ停止などの処分を受けるリスクがあるでしょう。
宿舎と生活設備の確保
企業は一定以上の居住面積や基本的な生活設備が整った宿舎を用意することが求められます。
男女別の居住スペースや通勤に無理のない距離への配置も重要です。
宿舎環境は実習生の仕事への意欲や定着率にも直結するため、単なる義務ではなく企業成長につながる投資といえるでしょう。
最低賃金以上の給与支給
実習生には都道府県で定められた最低賃金以上の給与支払いが義務付けられています。
残業手当や割増賃金も適用され、給与の適正支払いは監理団体や監督機関によって厳しくチェックされます。
適正な報酬は実習生のモチベーションを高め、企業にとってもメリットとなる重要な要素です。
まとめ
今回は「技能実習生を受け入れるには」というテーマで、制度の概要から具体的な手順、企業が準備すべき条件までを解説しました。
適切な知識と準備をすることで、企業と実習生の双方にとって実りある制度活用が可能になります。
以下に本記事の要点をまとめます。
1.対象職種は87職種159作業
2.受け入れ方式は主に団体監理型
3.実習責任者などの配置が必要
4.社会保険や労災保険への加入義務
5.宿舎や生活支援も重要な要素
制度を正しく理解し、丁寧な受け入れ準備を行うことが、成功の第一歩です。