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外国人の社会保険がすぐにわかる解説ガイド

「外国人を雇用するときの社会保険って、日本人と同じ?」

「在留資格との関係がよくわからず、手続きも複雑そう」

そんな疑問や不安を抱えている担当者の方は多いのではないでしょうか。

本記事では、外国人雇用における社会保険のしくみと手続きを初心者でも理解できるようにわかりやすく整理して解説します。

■この記事を読むと得られること

1.外国人労働者に必要な社会保険の基礎知識がわかる

2.加入条件・手続きの流れが理解できる

3.日本人との違いや注意点を押さえられる

この記事を読み終えるころには「外国人の社会保険対応は難しい」という不安が解消され、必要な対応を自信をもって進められるようになります。

社会保険の基礎から手続き・注意点まで、最短で理解したい方はぜひ続きをご覧ください。

外国人労働者と日本の社会保険制度の基礎知識

日本の社会保険制度とは

日本の社会保険制度は、病気やけが・老後の生活・失業といった不安を社会全体で支える仕組みです。

国籍に関係なく、法律上の要件を満たせば加入が必要とされています。

広義には健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険・労災保険の五つです。

狭義では健康保険・厚生年金・介護保険を「社会保険」、雇用保険と労災保険を「労働保険」と呼びます。

これらが労働者の生活を幅広く守る役割を果たしています。

外国人も社会保険加入が必要となる理由

外国人も日本で働く以上、日本人と同様に労働者として保護される必要があります。

そのため、所定労働時間・日数・雇用期間の見込みなど一定の条件を満たせば加入義務が生じるのです。

日本の医療費は高額なので、健康保険に加入していないと大きな負担になります。

また、厚生年金は帰国後に脱退一時金として払い戻しを受けられるため、経済的メリットもあるでしょう。

社会保険の種類(健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険・労災保険)

五つの制度がそれぞれ異なる役割を担っています。

健康保険は医療費の自己負担を抑え、厚生年金は老後の生活を支える制度です。

介護保険は40歳以上を対象に介護サービスを提供し、雇用保険は失業時の生活を守ります。

労災保険は仕事中や通勤中の事故に対して補償を行う仕組みです。

保険料は企業と労働者が分担しますが、労災保険のみ企業が全額負担する点が特徴となっています。

社会保険と国民健康保険の違い

社会保険は会社員が加入し、保険料を企業と労働者が半分ずつ負担します。

一方、国民健康保険は自営業者や無職の人が対象で、加入者が全額負担する仕組みです。

外国人労働者が企業に雇用される場合は、原則として社会保険に加入することになります。

外国人が社会保険に加入するための条件と注意点

在留資格(就労ビザ)と加入要件

外国人が社会保険に加入するには、働くことが認められた在留資格が必要です。

特定技能や技術・人文知識・国際業務などの就労ビザを持つ場合、国籍に関係なく加入義務が生じます。

正社員など所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上であれば原則として加入対象となり、雇用期間が2か月を超える見込みがあることも判断基準の一つです。

アルバイト・短時間労働者の加入基準

短時間労働者の場合、事業所規模などの要件を満たせば加入対象となります。

週20時間以上勤務・月額賃金88,000円以上・雇用期間1年以上の見込み・学生でないことなどが目安として示されています。

ただし、実際には事業所の規模や業種によって適用基準が異なる点に注意が必要です。

適用事業所の要件

社会保険への加入は、事業所が「適用事業所」であるかが重要になります。

法人なら従業員数に関係なく加入義務があり、個人事業所でも特定の業種で常時5人以上の従業員がいる場合は加入が必要です。

外国人を1名だけ雇用する法人でも加入は必須となります。

適用除外となるケース

一部の外国人は法律上「適用除外」となることがあります。

ただし、在留期間の長さによる判断基準は制度ごとに異なり、運用も変化しています。

日本での生活が一時的で本国の保険制度に引き続き加入しているケースや、短期ビザで来日した海外企業の派遣者などが該当する場合がありますが、個別の状況確認が必要です。

社会保障協定・脱退一時金など外国人特有の制度

外国人には特有の制度も存在します。

社会保障協定は二重加入を防ぐための国同士の取り決めで、脱退一時金は帰国後に厚生年金を払い戻す制度です。

厚生年金に6か月以上加入していれば申請が可能で、多くの外国人が利用しています。

日本人との対応の違いで注意すべき点

社会保険の仕組みは日本人と同じですが、外国人の場合は在留カードの確認やビザ更新と保険加入期間の整合性チェックが必要です。

在留期限が切れると社会保険の被保険者として扱えないこともあるため、外国人ならではの確認ポイントを押さえることが大切になります。

外国人労働者に関する社会保険の手続きと必要書類

入社時の手続き(健康保険・厚生年金・雇用保険)

外国人が入社したときの社会保険手続きは、日本人と同じ流れで行われます。

所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上であれば健康保険と厚生年金に加入し、週20時間以上の労働であれば雇用保険も適用されるのが一般的です。

手続きには基礎年金番号・在留カード・雇用契約書などが必要で、会社は入社日の翌日から5日以内に資格取得届を提出します。

労災保険の取り扱い

労災保険は仕事中や通勤中のけがや病気を補償する制度で、外国人も例外なく対象となります。

保険料は会社が全額負担するため、労働者の負担はありません。

外国人がけがをした場合、会社は労働者死傷病報告など必要書類を提出し、迅速に補償を受けられるよう手続きを行う必要があります。

退職時の手続き(資格喪失届・退職証明書など)

退職時には健康保険と厚生年金について資格喪失届を5日以内に提出します。

雇用保険については離職証明書や資格喪失届をハローワークに届け出る必要があり、これらは失業給付の申請に欠かせません。

会社が書類を提出しないと、本人は国民健康保険への切替ができず医療費が全額負担となる恐れがあります。

外国人本人が行う手続き(脱退一時金申請・市区町村手続き)

外国人は帰国後に厚生年金の一部が返金される脱退一時金を申請できます。

6か月以上厚生年金に加入していた外国人が対象で、脱退一時金請求書・パスポートの写し・銀行口座情報などが必要です。

また退職後は住んでいる市区町村で国民健康保険への切替手続きが必要になります。

行政への届出が必要となるケース

外国人を雇用した場合、会社は外国人雇用状況届出を提出する義務があります。

在留資格の変更や更新が必要な場合も、本人や会社が行政に書類を提出しなければなりません。

入社から退職、帰国後まで多くの手続きが関わるため、会社と本人が協力して正確に進めることが重要です。

社会保険対応を適切に行うためのポイントとサポート活用

賃金設定・扶養条件などの実務ポイント

社会保険を正しく適用するには、賃金設定や扶養の扱いを正確に理解することが大切です。

健康保険や厚生年金の保険料は標準報酬月額という月給の区分で決まるため、給与計算に誤りがあると保険料も正しく計算されません。

外国人労働者の勤務時間が増えて月収が上がった際は、速やかに届け出ることが重要です。

特定技能外国人の保険料納付状況の確認

特定技能外国人の場合、社会保険料が正しく納付されているかを企業が確認することが求められます。

保険料の未納や滞納があると在留継続にも影響する場合があるため、毎月の給与と控除額を丁寧に確認する必要があります。

在留カード・ビザ確認の重要性

社会保険の加入には、本人の在留資格が就労可能であることが前提となります。

在留カードは必ず確認し、資格外活動しか持っていない留学生を誤ってフルタイム勤務で雇うと不法就労に該当し、企業側が罰則を受ける可能性があります。

未加入・誤加入によるリスクと対処法

外国人を社会保険に加入させなかったり、誤って加入させてしまうと企業に大きなリスクが生じます。

未加入の場合、遡って最大2年分の保険料負担が発生することもあるため注意が必要です。

社労士・登録支援機関の活用方法

社会保険の判断や届出に不安がある場合、社労士や登録支援機関を活用することでミスを防ぎやすくなります。

専門家のサポートを適切に利用することで、社会保険対応の正確性が高まり、企業側のリスクも大きく減らすことができます。

まとめ

外国人を雇用する際の社会保険対応は、日本人と同様の制度を理解しつつ、在留資格や特有の手続きにも配慮することが重要です。

本記事では基礎知識から手続き・注意点まで幅広く解説しました。

最後に、押さえておくべき要点をまとめます。

1.社会保険の基本制度を理解する

2.加入条件と在留資格を確認する

3.短時間労働者の基準に注意する

4.必要書類と手続きを正確に行う

5.未加入リスクを把握し対応する

外国人の社会保険対応を正しく進めることで、企業も労働者も安心して働ける環境をつくれます。

制度を正しく理解し、適切な手続きを行いましょう。

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